ベッドに入ってから眠りの深淵に落下するまでの時間は僕(山崎)の愛すべきリスニングタイムです。イヤホンを耳にねじ込み、iPhoneで眠りに適した音楽を再生し、目をつむります。
このとき、選曲を間違えるとたいへんなことになります。比較的寝付きの良い僕ですが、せっかく深い眠りに身を委ねかけても、楽曲のせいで飛び起きることもあります。
間違っても選曲してはいけないのが、チャイコフスキーの序曲「1812」です。最初はゆったりとしたテンポで「さあ眠りなさい」とでも言わんとするかのような心地よいストリングスのアレンジでスタートしますが、終盤になるととんでもないことになります。
なにせナポレオンのモスクワ遠征を題材にしたと言われる曲だけに、終盤は突撃!てな感じでとんでもなく前のめりで威勢のよい展開が繰り広げられます。深い眠りを貪っている人でも、普通の人間ならここで飛び起きます。そして、トドメは大砲です。
終盤の1分間は、曲に合わせてドッカンドッカンと大砲をぶっ放すのです。実際、楽譜には「Cannon」(大砲)の指定があり、ボストンのタングルウッド音楽祭や自衛隊の行事では、ホンモノの大砲ぶっぱなしと共に演奏されるそうです。
耳元で大砲ドッカンドッカン。こうなると完全に目はさえ、呼吸は荒く、心臓はばくばくで、この後1時間は眠ることができません。
さて、渡り鳥的スーパードラマーのコージー・パウエルとチャイコフスキーは、どのような関係があるのでしょうか? 80年代当時のコージーは、ライブのドラムソロで序曲「1812」に合わせてドラムを叩いていました。
私(山崎)は、マイケル・シェンカー・グループの武道館ライブで彼のドラムソロを目撃しました。PAから大音響で再生される「1812」に合わせ、さながら大オーケストラを指揮しているかのように、オーバーアクションで叩きまくります。それはそれは、かっこよかった。
ソロアルバムに収録されている「Over The Top」という曲の5分20秒あたりから、「1812」に合わせて叩いています。大砲っぽい爆音も入っています。ただし、オケとの共演ではなく、シンセサイザーで作ったオケに合わせての演奏です。
では、コージー・パウエルの「Over The Top」とベルリン・フィルの「1812」をApple Musicでお聴きください。
Junichiro Yamasakiの「大砲ぶっ放すコージー・パウエルとチャイコフスキーとの意外な関係」を@AppleMusicで聴こう。