古いロックやジャズを語る上で欠かすことのできない鍵盤楽器がハモンドオルガン (Hammond Organ) です。米国人のローレンス・ハモンドというおじさんが1934年に発明しました。家庭でも手軽にパイプオルガンの音を演奏したいという課題を解決するために作ったそうです。

モーターで大きなパイプに空気を送り込むパイプオルガンを自宅に設置するのは大変です。余談ですが、昔、軽井沢の別荘地に居住するお金持ちの引退牧師の家にパイプオルガンの録音に出向いたことがあります。そのパイプは、広いリビングルームの吹き抜け天井のてっぺんにまで達っし、もしかしたらそのまま天空へと突き抜けているのではないかと思えるほど林立する管の群れに圧倒されながら録音を行った記憶があります。

いくら、米国の住宅事情が日本より恵まれているとはいえパイプオルガンをおいそれと自宅に設置できません。そこでハモンドさんは、ギザギザ歯車が回転する際の周波数信号(サイン波)をコイル状のピックアップで拾いそれをスピーカで再生する方法でパイプオルガンをシミュレートする機構を発明しました。ウィキペディアにはこんな逸話が記載されています。

【ウィキペディアより引用】
パイプを用いないこの楽器を人々は当初、「オルガン」とは認めなかったが、シカゴ大学のホールでパイプオルガンとハモンドオルガンを多くの人々の前でブラインドテストした結果、この楽器は「オルガンである」と認められたという。

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この写真は、ハモンドオルガンの内部です。画面左の横に貫く太めのシャフトをモーターで回転させ、その回転を減速歯車で「トーンホイール」と呼ばれる信号発生用の歯車に伝えます。写真右下に縦方向に突き出した複数のロッドが見えます。これがトーンホイールを回転させるロッドです。トーンホイールは、発音周波数ごとに必要だったので100枚近く設置されています。だから実機は、めちゃくちゃ重たいです。写真は歯車などの回転分部に油を注いでいる図です。

トーンホイールから発生した各周波数のサイン波をドローバー(写真)と呼ばれるレバーを出し入れすることで音質を調整します。音の倍音構成が変化するので、音色も変化するわけです。

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鍵盤楽器は弾けない私(山崎)ですが、なぜか昔からハモンドオルガンの音がとても好きで、好きが高じてPocket Organ C3B3なるハモンドオルガンをシミュレートしたiOSアプリを開発してしまいました。Pocket Organ C3B3は、実機を徹底研究しています。写真は、そのときの様子です。

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ちなみに、ハモンドオルガンの横に鎮座する家具調の大きな箱は、レスリー・スピーカーと呼ばれる拡声装置です。上下のスリット部分から音が出てきます。内部ではスピーカーの上に設置したホーンが回転しています。それにより独特の音のウネリを作り出せることから、ハモンドオルガンには欠かせない存在といえます。

今回のプレイリストはそんなハモンドオルガンの名演を集めました。プレイリストから抜粋して主だった曲を解説しましょう。

●「The Cat」Jimmy Smith
1曲めのジミー・スミスはあまりにも有名です。ジャズオルガンの第一人者ですね。彼の代表曲が「The Cat」です。この人が編み出したファンキーでパーカッシブな奏法は、それまでのオルガンの常識を根底から覆したそうです。それまでは雑音として嫌われていたクリックノイズとよばれる鍵盤のオンオフ時に物理的な接点が発するノイズを見事に使いこなし、それがファンキーでパーカッシブな世界を形作っているのかもしれません。

●「Green Onions」Booker T. & the M.G.’s
オルガンの定番曲です。Booker T. Jonesは、1944年生まれなので70歳を超えていますが、今でも元気に演奏活動を続けているそうです。2年前には、来日してBlue Noteで演奏を披露しました。

●「Elbow Grease」Niacin
バカテク揃いのオルガントリオ「ナイアシン」のこれまた超絶バカテク曲です。ジョン・ノベロのクリックの効いたクランチ気味のオルガンに、ビリー・シーンのこれまたクランチ気味の速弾きベースが絡みつくすさまじい演奏です。ドラムのデニス・チェンバースが死ぬほどタイトなリズムと叩き出しているので、オルガンとベースの超絶バカテクが際立ちます。(残念ながらApple Musicでは配信されていませんでした。Spotifyのみです)

●「Squib Cakes」Tower of Power
重厚なホーン・セクションで知られるファンクバンドのTower of Powerにもチェスター・トンプソンという名オルガニストがいます。鍵盤をパーカッションのように叩いて、リズムを刻む独特の奏法を聴いていると「オルガンは打楽器かい?」と思ってしまうほどにかっこいいです。中でもこの曲の4:00あたりから繰り広げられるオルガンソロは、まさに圧巻です。そして、5分を過ぎたあたりから、最高音であるC6鍵盤を延々と押し続けます。あるオルガニストが言いました「オルガン奏者はC6(最高音)を目指す」と。その格言をそのまま表した演奏です。

●「Hamburger Concert」Focus
オランダのプログレバンド「フォーカス」の名曲です。イントロは、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」の主題部分がハモンドオルガンによって奏でられます。

●「Whenever You’re Ready」Brian Auger’s Oblivion Express
英国出身のジャズ・ロックオルガン奏者ブライアン・オーガーの名曲です。オリジナル音源が配信サービスになかったので、最近のライブから聴いてください。70年に発売されたオリジナル音源の方がぜんぜんかっこいいので早くストリーミングサービスに登場してほしいものです。

SpotifyとApple Musicのプレイリストでお楽しみください。


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